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    J・Hair News Vol.38 / J・Hair’s EYE
がん治療と仕事の両立に関する調査ー三菱UFJリサーチ&コンサルティング 共生社会室 研究員 野田鈴子

1. はじめに

近年、がん患者の生存率上昇や入院期間の短縮傾向から、がん治療を継続しながら働くことへのニーズが高まっている。国の政策としても、2012年に閣議決定された「第二期がん対策推進基本計画」において、働く世代へのがん対策の充実が重点課題として位置づけられている。しかしながら、社会への理解は十分とはいえず、がん治療と仕事の両立に関しては多くの課題が存在している。

 こうした状況をふまえ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、がんに罹患した就業者における治療と仕事の両立の実態や、両立支援制度の利用状況、職場での相談状況、また就業継続のために職場に求められる取組などを明らかにすることを目的として、2015年8月にアンケート調査を実施した。調査の対象者は、がん罹患時に正社員として働いており、現在も何らかの形で就業を継続している男女978名(男性670人、女性308人)である。

2.がん治療と仕事を両立するためのポイントは
「@正しい理解」「A両立支援制度」「B働きやすい職場づくり」

 本調査から明らかになった、がん治療と仕事を両立するためのポイントは、 「@がん治療と仕事の両立への正しい理解」「A両立支援制度と相談体制の整備」「B普段からの働きやすい職場づくり」の3点である。以下では、まず調査結果について概観した上で、上記3つのポイントについて企業が具体的にどのような対策を取るべきなのかについて考えてみたい。

3.復職後の配置転換は「希望以外」が約3割

 本調査では、男性は50代での罹患がもっとも多い(50.6%)。40代(35.1%)を合わせると85.7%に上り、罹患時の役職は約半数(45.1%)が課長以上の管理職である。
 女性は40代での罹患が約半数(47.7%)であり、30代(29.9%)を合わせると77.6%が40代以下での罹患となり。がんの種別では、男性は「大腸がん」がもっとも多く(27.3%)、「胃がん」(17.8%)「肺がん」(9.1%)と続く。女性は「乳がん」が約半数(45.5%)を占め、次に「子宮頸がん」(19.5%)となる。
 がん罹患後の労働時間をみると、週あたり「40時間未満」の割合は罹患後1年間には約4割となっているが、直近1年間は2割まで低下している。罹患後は一時的に労働時間を抑える傾向があるといえる。
 働き方の変化をみると、罹患後に軽微な業務への転換などの仕事内容の変更や、勤務時間の短縮を経験した人が約2割となっている。復職後に所属部署など配置の変更があった人は約1割だが、そのうち変更が、「自分の希望以外だった」という回答は約3割に上る。
 このように、がん罹患後は、がんの種類や術後の症状により、仕事内容などの変更が必要となる場合がある。しかし、そうした症状は個人によって様々であるため、画一的な対応は難しい。患者が自らの症状を理解し、必要な対応について職場の上司や人事担当者と話し合い、双方納得のいく調整を行うことが重要である。

4.就業継続のカギは「上司・同僚の理解」

 罹患後の勤務先の変化をみると、「同じ勤務先で働いている」が86.0%、「退職し、転職・再就職して現在も働いている」が14.0%となっている。
 同じ職場で働いている理由としては、「職場の上司の理解・協力があったため」(46.4%)「職場の同僚の協力があったため」(46.4%)「職場の上司の理解・協力があったため」(32.7%)の割合がそれぞれ高くなっている。就業継続の可否は、上司・同僚の理解と協力によるところが大きいことがわかる。
 がん罹患後に職場を退職した理由では、診断時の進行度がI期以前の場合は「特にない」が41.4%ともっとも高く。次いで「治療と仕事を両立するために活用できる制度が職場に整っていなかった」(17.2%)となっている。一方、II期以降は「体力面等から継続して就労することが困難であった」(32.8%)の割合がもっとも高くなっており、進行度によって差がみられる。
 一度退職して再就職した場合、約4割の人が、正社員からパートやアルバイト、契約・派遣社員といった非正規社員に代わっていることにも着目しておきたい。

5.両立支援制度の状況は企業規模で異なる

 がん罹患後の就業継続には、同時に企業の両立支援制度も重要である。罹患時に働いていた企業の料理る支援制度の有無をみると、企業の規模により大きな差がある。
 たとえば「半日・時間単位の休暇制度」は従業員1000人以上の企業で67.8%が「あった」とする一方で、1〜99人の企業では37.7%となっている。同様に、「治療目的の休暇・休業制度(金銭的補償をともなうもの)」は同50.2%に対して、同28.4%、「失効年次有給休暇の積立制度」は同49.2%に対して、同13.3%にとどまっている。
 しかしながら、これら両立支援制度の実際の利用では、企業規模による大きな差は出ていない。例えば前述の「治療目的の休暇・休業制度(金銭的補償をともなうもの)」は1000人以上の企業では28.2%が利用しているが、1〜99人の企業でも25.2%が利用している。大きな規模の企業では、制度があっても利用が進んでいない可能性が示唆される。
 一方、「遅刻、早退又は中抜けなどの柔軟な対応」については、1000人以上の企業での利用率が21.4%であるのに対し、1〜99人の企業では35.0%と大きく上回っている。規模の小さな企業には、柔軟な対応が可能になるという強みがあるといえる。

6.職場の対応は「特に何もなかった」が約半数

  がん患者の症状はひとりひとり異なるため、本人が職場の上司や同僚、人事担当者に対して自分の症状と求める配慮を明確に伝えることが重要となる。職場は、がんに罹患した社員が自分の状況を言い出しやすい職場風土づくりに努める必要がある。
 がん罹患時に相談した相手は「所属長・上司」がもっとも多く、約8割に上る。
 その一方で、職場がとった対応は「特に何もなかった」がもっとも高く、約5割を占める。次いで「今後の働き方について、あなたの意思や希望を確認した」の割合が34.6%となっているものの、業務量の相談や職場への説明といった対応は1割台にとどまっている。
 こうした対応について、治療と仕事の両立支援に先進的に取り組んでいる企業の中には、復職前から復職後の一定期間、本人との定期的な面談を設定する取り組みを行っているところもある。

7.社会との接点や生きがいも仕事を続ける理由に

 がん罹患後も就業を継続している理由としては、「生活を維持するため」が約8割ともっとも高い割合となっている。一方、「社会や人との接点を持っていたいから」(28.3%)「治療費のため」(22.5%)「働くことは生きがいだから」(21.5%)など、社会との接点や生きがいも仕事に求めている人も存在する。自由回答からは、病気になっても仕事を続けることで、気持ちが前向きになったり生きる活力になったりしているという声もあがっている。
 がん罹患後の仕事に対する考え方では、「短い労働時間でも高い成果を出すように心がけている」「仕事で必要とされている」に約8割が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答している。
 また、「がんのことで上司や同僚から気を遣われたくない」でも約7割が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答している。がんだからといって特別扱いを求めるのではなく、短い時間でも成果を出している人が多いことがうかがえる。

8.求められるのは、残業が少なく柔軟な働き方ができる職場づくり

  勤務先に求められる支援としては、「出社・退社時刻を自分の都合で変えられる仕組み」と「がん治療に関する費用の助成」の割合がもっとも高く、いずれも3割となっている。次いで、「残業をなくす/減らす仕組み」(23.3%)、「1日単位の傷病休暇の仕組み」(22.9%)となっている。
 ただし、がんに罹患した社員にのみこうした対応をとればよいというわけではない。自由回答からは、「職場では理解を得ていたが、繁忙期に、中抜けや早退・遅刻等、仕事に穴を空けることに、自分として、罪悪感があった」といった声も聞かれる。周りが常に残業をしている職場では、自分だけ残業免除などの配慮を受けることに心苦しさを感じてしまうだろう。普段から残業が少なく柔軟な働き方ができる環境を職場全体で作ることが重要である。

9.がんになっても安心して働き続ける社会へ

 ここまでの調査結果をふまえて、がん治療と仕事を両立する社員を支えるため、企業が取り組むべきポイントをまとめてみたい。
@がん治療と仕事のの両立への正しい理解
 まずは、職場の中でがんに対する正しい理解を広め、がんに罹患した社員が相談・報告をしやすい風土を作ることが重要である。今回の調査からは、仕事を続けることが生活の立て直しや生きがいにつながっていることもうかがえた。がんになったら仕事は続けられないという思い込みをなくし、職場全体で就業業務を支援するという雰囲気を醸成していくことが必要である。
A両立支援制度と相談体制の整備
 次に、傷病事由でも利用できる半日単位の休暇、時差出勤などの制度を整え、職場に周知していく必要がある。同時に、がんに罹患したという報告を社員から受けた場合にどのような対応をとるかということを、上司と人事担当者の間で明確にしておくとよいだろう。今回の調査では、上司に報告をしたという人が大半だったが、傷病休暇を取る場合などは、人事担当者も交えて話し合いをすることが望ましい。
B普段からの働きやすい職場づくり
 上記のような取り組みを行ったとしても、そもそも職場で恒常的に残業がある、休暇が取りづらいという環境では、がんに罹患した社員が報告することをためらったり、働き方を変えられず無理を重ねてしまったりという事態が起こりうる。普段から誰もが働きやすい環境を作ることが、治療と仕事を両立しようとする社員を支えるためのもっとも重要なポイントであるといえるだろう。
 がんに罹患しても安心して働き、暮らしていける社会を構築するためには、社会全体の理解と各企業の積極的な両立支援に向けた取組が必要不可欠である。ここであげたポイントが、取組を進める上での一助となれば幸いである。

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