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    J・Hair News Vol.40 / J・Hair’s EYE
社員9人中がん経験7人だからできる就労・復職支援 がん治療と仕事の両立に取り組む企業最前線(第2回)

もし今、自分ががんにかかったら……。
考えてみたことはありますか?
そのとき家族は、生活は、経済面は?
仕事は続けられるのでしょうか。

社員が治療をしながら働き続けるために、企業サイドからサポートを行うケースが増えつつあります。
産業カウンセラーの太田由紀子さんが最新の事例を取材しました。

第2回は、昨年「東京都がん対策推進計画(第一次改訂)」に基づく企業表彰において、特別部門で優良賞を受賞したキャンサー・ソリューションズ株式会社の取り組みを紹介します。同社は、「がん経験者を対象とした調査や企業へのコンサルティング」、「がん経験者のニーズや知見の情報発信」、「がん経験者の復職・就労支援」の3つを事業領域とする企業です。
お話をお聞きしたのはキャンサー・ソリューションズ社員で社会保険労務士、社会福祉士、産業カウンセラーの資格も持つ藤田久子さんです。
キャンサー・ソリューションズは、代表取締役社長の桜井なおみ氏をはじめ、社員9人(2016年8月現在)中7人はがんサバイバー。がん罹患(りかん)者の扱いに悩む企業が多い中、同社は「がんに罹患した経験を持つからこそできることがある」と、「がんと就労」にかかわることを事業の軸に、様々な分野で挑戦し続けています。
がんの治療中の社員も多いため、少ない人数でも仕事が回るようプロジェクトごとに仕事や時間を調整するワーク&シェアリング制度を実施。数人で情報を共有し、通院や治療日を調整できるように工夫しています。
社員同士で業務をシェアし調整するという働き方なので、疾病に限らず育児や生活の状況によっても柔軟に対応、在宅勤務も認めています。実際に、つい最近まで育児のために在宅勤務をしていた社員もいるそうです。がん罹患者が多い中、がん未経験者への配慮もあるところがこの会社の特長です。
がんと就労に関する、社会的にも意義のあるプロェクトをしなやかにこなす、まさに少数精鋭部隊。特別部門で優良賞を受賞した意味が分かるような気がしました。
では、藤田さんのがん罹患と治療後の復職事例を紹介しましょう。

社会保険労務士である藤田さんは、がん治療で入院中にほかの患者からの相談を受け、自分が知っていた高額療養費や傷病手当金の制度のことを患者に伝えていくことが支援になると考えました。
伝えたいという思いを形にするために、中外製薬と組み、病気になったときに必要な制度や仕組みが分かる資料作りをしています。中外製薬は今年の優良賞受賞企業です。がんと就労に関して意識の高い企業がタッグを組むことで、何かが生まれ形になる必然性を感じました。このほかにも製薬会社数社と、さまざまなプロジェクトを展開しているそうです。
「製薬会社は抗がん剤を作っても自分で試したりできない。副作用などが分からないから患者が見えなくなる。薬の向こうに患者がいることを、伝えていきたい」と、藤田さんは言います。
製薬会社のMR(医薬情報担当者)に対して、患者になったという想定での研修やワークショップを開催。副作用で手足がしぴれる感覚を体感するために、手袋をしたまま箸を持って食事をしてもらったそうです。 身をもって体験したMRが医療現場へ新薬を届けるだけでなく、患者への理解を深めることで何かが変わることを期待し、地道な努力を惜しみません。そうした相互作用がさらに新しい薬の開発につながったり、副作用対策が実現するなど、新しい動きが出てくるのではと期待しているそうです。

がん罹患者が「困った・つらかったこと」
第2位は「温泉」

キャンサー・ソリューションズは、コンサルティングやリサーチなどのプロジェクトにも重点を置いています。がん罹患者に実施したアンケート調査で「がんになって困ったこと、つらかったこと」を質問すると、第1位は「収入」でした。では、第2位は何か分かりますか?
答えは「お風呂(湿泉)に入れないこと」だったそうです。驚きの結果ですが、乳がん罹患者にとって、温泉に行くためにはいくつか高いハードルがあります。
日本の宿泊施設では、乳がん罹患者のために様々な施策を考える宿が増えてきました。しかし、その計らいは当事者からするとピント外れのものが多いようです。
例えば、入浴着を着て入浴しようというキャンペーン企画の相談がありました。患者は入浴着着用でお風呂に入れるという企画でしたが、普通に裸で入浴するお客さんの中では、目立ってしまいます。患者は手術の傷跡も見られたくありませんが、目立ちたくもありません。どちらかというとほかの入浴者に紛れたいと思っています。集団の中で目立つより、家族で入れる貸し切りのお風呂のほうが安心して入浴できます。このように、罹患者の気持ちが分からないことで起こる問題を解決するため奮闘しているそうです。
一方、情報を発信していく事業として、がん罹患者を登録し、講師として企業へ派遣して、体験者の生の声を伝えています。現在講師として二十数人の登録があります。

自らの経験を生かし、患者の就労をサポート

キャンサー・ソリューションの軸となる就労支援事業ですが、再就職の職業紹介では苦戦しているようです。厚生労働省から認可を受けて職業紹介できる会社として、がん罹患者への就労支援は責務ですが、再就職は罹患者、企業、双方にリスクを伴う点が難しいようです。
再就職がうまくいくのは、社長や家族ががんを経験しているなどある程度がんについての理解がある場合が多いようです。また、企業が求めるスキルと本人のスキルがぴったり合い、通院スケジュールも企業が配慮してくれる場合は成功するようです。一方、中途で優秀な人材を欲しい企業から、がん患者は安く雇えると思われてがっかりしたり、紹介した登録者の病気が悪くなり離職するケースなど、悔しい思いをすることもあったそうです。
藤田さん自身も、早期にフルタイムで復職した際、思っていた以上に体力が落ちていたことや、抗がん剤やホルモン治療の副作用で認知機能が低下していたことに気付かず、思ったように働けずに再度休職した経験を持っています。当時を振り返り「自分は頑張りすぎた」と言います。
しかし復職するために努力し、病気の社員を対象とする短時間勤務制度がなかった職場で、育児休業明けの制度を適用してもらい、治療後9か月で復職がかないました。この前職の経験が、現在の復職相談業務でとても役に立っているようです。
それは、復職者に一番多い悩みである、復職時期や時短勤務についての相談に生かされています。制度がない会社でも、連用ルールを個人の状況に合わせ引き出していくことが大事で、無理だと思うこともあきらめず訴え続けたらかなうこともあることや、患者の言い分だけでなく、制度の枠の中での運用に苦慮する担当者のつらさも踏まえ、会社側のメリッ卜も出していくことをレクチャーします。
話し方のポイントもあるそうです。「あくまでも交渉は本人がやること。そのサポートをするのが私たちの役目です。仕事をすることは、自分で居場所を作ることになります。がん罹患者は、もとの自分には戻れません。新しい自分を受け入れ、これからの人生を生きていくことが重要です」と藤田さんは言います。

がん罹患者の声から生まれた多くのプロジェクト

バッグメーカーとともに、乳がん罹患者向けのバッグの開発にも携わっています。これは、前述したアンケート調査で判明した乳がん患者の悩みから生まれたもの。乳房を取った罹患者の、手術跡にバッグがあたって痛いという回答を受けて、乳がん患者に優しいバッグのストラップを作るプロジェクトを立ち上げ、いくつかのストラップを開発、ずり落ちにくく痛くないストラップができました。患者に限らずどんな女性も使えて、機能性、色や柔らかさに留意したおしゃれなものができたそうです。
乳がん罹患者の利用に配慮している「ピンクリボンのお宿ネットワーク」の加盟施設の情報やクーポンを掲載した冊子「ピンクリボンのお宿」の作成にも協力しています。

がん罹患者にしか分からない、かゆいところに手が届く企画がどんどん誕生していることは、がんサバイバーにとってとてもうれしいことです。少しの改善によって、制約されていた行動ができるようになり、外出がかなう。日々の生活が楽しく便利になると幸せになれます。健常者にとっては他愛もないことでも、罹患当事者には大きなこともある。そんなちょっとしたことを拾い上げ、提案し続けます。
がんにかかったことを強みに、その経験を資源として還元し、事業展開するキャンサー・ソリューションは、今後もがんと就労のイノベーションを巻き起こし続けることでしょう。

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